園生忌(7月29日)

園生忌(そのうき)は、1999年(平成11年)7月29日に亡くなった小説家・フランス文学者、辻邦生をしのぶ忌日です。人間の精神や芸術、歴史を壮大な物語として描いた辻の文学に触れ、その作品世界を振り返る日となっています。
由来
「園生忌」という名称は、辻邦生の短編小説『遠い園生』にちなんでいます。「園生」は、草木が植えられた庭や庭園を意味する言葉で、「そのう」と読みます。
『遠い園生』は、辻が旧制松本高等学校に在学していた時代に創作した最初期の習作です。1945年(昭和20年)には、同校の寄宿寮誌『思誠』に発表されました。後年の豊かな文学世界へとつながる、辻邦生の創作の原点を示す作品の一つとされています。
辻邦生とは
辻邦生は1925年(大正14年)、東京に生まれました。旧制松本高等学校を経て東京大学文学部仏文学科を卒業し、フランス文学の研究と教育に携わりながら、小説や評論、随筆などを数多く発表しました。
1957年(昭和32年)から1961年(昭和36年)までフランスに留学し、ヨーロッパの歴史や美術、思想に触れた経験は、その後の創作に大きな影響を与えました。帰国後に発表した長編小説『廻廊にて』で近代文学賞を受賞し、本格的な作家活動を始めます。
代表的な作品
- 『廻廊にて』:辻邦生の最初の長編小説で、近代文学賞を受賞した作品です。
- 『安土往還記』:16世紀の日本を異国人の視点から描き、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞しました。
- 『背教者ユリアヌス』:ローマ皇帝ユリアヌスの生涯を題材にした歴史小説で、毎日芸術賞を受賞しました。
- 『春の戴冠』:ルネサンス期のフィレンツェを舞台に、芸術と政治、人間の理想を描いた長編小説です。
- 『西行花伝』:歌人・西行の生涯を描いた作品で、谷崎潤一郎賞を受賞しました。
旧制松本高等学校と辻邦生
辻邦生は旧制松本高等学校で学び、この時代に後の小説家・北杜夫と出会いました。読書や思索に没頭し、友人たちと文学について語り合った松本での日々は、辻自身が後の作家活動の原点として振り返った重要な時期です。
『遠い園生』も、この松本高校時代に生まれました。園生忌は、一人の作家の命日をしのぶだけでなく、若き日の創作が長い年月を経て壮大な文学へ育っていった歩みを見つめる日でもあります。
園生忌の過ごし方
園生忌には、『廻廊にて』『背教者ユリアヌス』『西行花伝』などの代表作を読み返すほか、辻邦生の随筆や日記に触れてみるのもよいでしょう。歴史上の人物や時代を描きながら、人間がどのように生き、美や理想を求めるのかを問い続けた辻文学の魅力を改めて知る機会になります。
豆知識
- 辻邦生は小説家としてだけでなく、フランス文学者、評論家、大学教授としても活動しました。
- 『廻廊にて』は1963年に刊行され、辻邦生が作家として広く知られるきっかけとなりました。
- 『背教者ユリアヌス』は毎日芸術賞、『西行花伝』は谷崎潤一郎賞を受賞しています。
- 辻邦生は1999年7月29日、長野県軽井沢町で73歳の生涯を閉じました。