人権宣言記念日(8月26日

人権宣言記念日のイメージ画像


8月26日は、1789年のこの日にフランスの憲法制定国民議会が「人間と市民の権利の宣言」を採択したことにちなみ、「人権宣言記念日」として紹介されています。この宣言は「フランス人権宣言」とも呼ばれ、自由や平等、国民主権、言論・思想の自由など、近代社会の基本原則を示した歴史的な文書です。

由来

1789年、フランスでは深刻な財政危機や身分制度への不満などを背景にフランス革命が始まりました。第三身分の代表を中心とする議員たちは6月17日に「国民議会」を名乗り、さらに憲法制定を目指す憲法制定国民議会へと発展していきます。

新しい憲法をつくるにあたり、その前提となる基本原則として、人が持つ権利を明文化する構想が進められました。1789年8月20日から26日にかけて前文と各条文が一つずつ審議・採決され、8月26日に全17条からなる「人間と市民の権利の宣言」が成立しました。

そのため8月26日が、この歴史的な人権宣言を振り返る日として「人権宣言記念日」と呼ばれています。なお、ルイ16世が宣言を承認したのは同年10月5日で、宣言は後に1791年憲法の冒頭にも置かれました。

「人間と市民の権利の宣言」とは

宣言は前文と17の条文から構成され、人間が生まれながらに持つ権利や、国家権力のあり方について基本的な原則を示しています。

  • 自由と平等:第1条では、人は自由であり、権利において平等であるという原則を掲げています。
  • 自然権:第2条では、自由、財産、安全、圧政への抵抗を、人が持つ基本的な権利として示しています。
  • 国民主権:主権の根源は国民にあるという考え方を示しています。
  • 思想・意見の自由:宗教を含む意見を理由に不当に妨げられないことを掲げています。
  • 表現の自由:思想や意見を自由に伝えることを、人間の重要な権利の一つとしています。
  • 権力分立:権利の保障と権力の分立が確立されていなければ、憲法を持つ社会とはいえないという考え方を示しています。

宣言が生まれた背景

1789年以前のフランス社会では、聖職者、貴族、第三身分という身分制度が存在し、税負担や政治参加などをめぐって大きな格差がありました。フランス革命の進展とともに、こうした旧来の身分的特権を見直す動きが急速に進みます。

1789年8月4日には憲法制定国民議会が封建的な特権の廃止を決議し、その流れの中で、身分ではなく人間が普遍的に持つ権利を示そうとしたのが人権宣言でした。

宣言の成立には、18世紀の啓蒙思想に加え、1776年のアメリカ独立宣言など、それ以前に広がっていた自由や権利をめぐる思想からの影響も指摘されています。

現在のフランスにも残る重要な原則

「人間と市民の権利の宣言」は単なる歴史資料ではありません。現在のフランス第五共和政の1958年憲法前文も、1789年の人権宣言によって定められた人権と国民主権の原則への支持を明記しています。

フランスの憲法評議会の判断でも宣言の条文は憲法上の基準として用いられており、200年以上前につくられた原則が、現在のフランスの法制度にも影響を与え続けています。

現代から見ると残されていた課題も

自由と平等を掲げた画期的な宣言でしたが、1789年当時、その理念が社会のすべての人に等しく実現していたわけではありません。とりわけ女性は政治的な市民として十分な権利を認められていませんでした。

こうした状況に対し、フランスの思想家・劇作家オランプ・ド・グージュは1791年に「女性および女性市民の権利宣言」を発表し、女性にも男性と等しい市民的・政治的権利を認めるよう訴えました。

人権宣言の歴史を振り返ることは、その画期的な理念だけでなく、掲げられた「平等」を現実の社会でどこまで実現できたのかを考えることにもつながります。

「世界人権デー」とは別の日

8月26日の「人権宣言記念日」と混同しやすいのが、毎年12月10日の「人権デー(Human Rights Day)」です。

12月10日は、1948年12月10日に国際連合総会が「世界人権宣言」を採択したことに由来し、国連が正式に定めている国際的な記念日です。一方、8月26日は1789年のフランス人権宣言の成立にちなむ日であり、両者は異なる歴史的出来事を記念しています。

豆知識

  • 正式名称は「人間と市民の権利の宣言」で、日本では「フランス人権宣言」とも呼ばれます。
  • 宣言は前文と17条から構成されています。
  • 条文は1789年8月20日から26日にかけて順次採決され、8月26日に成立しました。
  • 第1条では自由と権利の平等、第2条では自由・財産・安全・圧政への抵抗などが基本的な権利として示されています。
  • 1789年の宣言は、現在のフランス憲法秩序にも重要な位置を占めています。
  • 国連の「人権デー」は8月26日ではなく、世界人権宣言が採択された12月10日です。

出典

  • フランス国民議会「La Déclaration des droits de l'homme et du citoyen」
  • フランス大統領府「La déclaration des droits de l'homme et du citoyen」
  • フランス憲法評議会「Déclaration des droits de l'homme et du citoyen du 26 août 1789」
  • 国際連合「Human Rights Day」関連資料